2019-11-16

吉村瞳 interview 2019

 

吉村瞳
吉村瞳 official website

吉村瞳 はじめてのアルバム『isn't it time』を発表して8年になるんですけど、最近、演奏したり、歌を書いたりすることが、また、とても楽しくなってきて……特に今、歌詞を考えているときがとても楽しいんです。

吉村瞳は無邪気に話す。
年間100を超えるライヴ数。アコースティック・ギターと(アコースティック・タイプの)ラップ・スティール・ギターを使いこなし、オリジナルとカヴァーを織り交ぜたレパートリーは200曲以上。日々、異なるセットリストやア・カペラ、感情の意のままに繋がるメドレー、ギター奏法はボブ・ディランやグレイトフル・デッドのパフォーマンスのように豊かな表情を持っている。つねに工夫に満ちた彼女のライヴは観客を飽きさせないどころか、彼らの集中力までも高めてしまう。そして演奏を終えた直後の吉村瞳の達成感あふれる笑顔は、周囲の緊張を一気に溶きほぐし和やかなムードを漂わせる。


Q : 学生時代からバンドはやっていた?
吉村瞳 はい。高校生の時に軽音楽部に入って……プロになろうとか、そういう意識はなかったんですけど、高校のときのその3年間が、女子校だったんですけど、こんなに楽しいことがあったのかと思うほど楽しくて、卒業するときも父が「なにもしないで後悔するよりも、やりたいことをやって後悔しなさい」と後押ししてくれたので、そのまま音楽活動をするようになりました。

Q : バンドからソロになったのは?
吉村瞳 最初はJポップとかを聞いていて、そのときわたしはヴォーカルじゃなくてギター担当でした。そのバンドと平行して女の子ばかりの3ピースで、スティーヴィー・レイ・ヴォーンのカヴァー・バンドもやっていました。高校を卒業してからは年上の人たちとR&Bやブルースのバンドで、そこでヴォーカルも担当するようになったんです。でアコースティック・セットもやるようになり、その延長で女性デュオでも活動するようになりました。そしていつからかひとりになって……
吉村瞳
isn't it time 2012

Q : 
スライド・ギターをはじめたきっかけは?
吉村瞳 わたしは高校生のときからオールマン・ブラザーズ・バンドを聞いて「(スライド・ギターのことを)何の音だろう?」ってずっと思っていたんです。ギターの弦の上をボトルやバーで滑らせて音を出す奏法を知らなかったんです(笑)。で、あるとき友だちに「スライド・ギターを教えてくれる人がいるから」って誘われて、何もわからないままについて行ってびっくりしたんです。あ、あの音だ! って(笑)。
ラップ・スティール・ギターを知ったのはその後です。

吉村瞳
Q : ギターを膝の上において弾いているギターのこと?
吉村瞳 そうです。すぎの暢さんという人がアコースティック・タイプのラップ・スティール・ギターで演奏しているのを聞いて、コレだ! って思いました。

Q : ラップ・スティール・ギターにはエレクトリック・タイプのものもあります。どちらかといえば、エレクトリック・タイプのものの方が一般的だと思いますが、どうしてアコースティックだったのですか?
吉村瞳 最初はエレキギターを持ってバンドをやっていて、バンド時代はヴォーカルじゃなかったんですけど、ソロになってアコースティック・ギターを持って活動していたんです。
ラップ・スティール・ギターはエレクトリック・タイプのものは知っていて、ペダル・スティール・ギターとか、でもアコースティック・タイプのものがあるとは知りませんでした。それが衝撃的で(笑)。1本の木で作られていて、中が空洞なんです。だからとても軽くって、普通のギターとは音の響きが違ってふしぎな魅力があるんです。



歌はお肉みたいなもの

Q : 歌を作るときも、そのラップ・スティール・ギターを使用するんですか?
吉村瞳 いろいろです。直感的に、このギターで作ってみようとか思うんです。

Q : いろいろなギターのチューニングの種類があるんですね?
吉村瞳 そうですね。通常のレギュラー・チューニングから開放した(コードを押さえていない)状態で和音ができているチューニングがあって、オープン・チューニングというのですが、その種類は無限にありますよね。
オープン・チューニングは手が小さく握力のない人でも簡単にコードを押さえられるので、とても女性向きだと思います。それに、アコースティック・タイプのラップ・スティール・ギターと同じで、オープン・チューニングにもふしぎな響きがあるんです。同じコードでもレギュラー・チューニングのときとオープンでは少し聞こえ方が違います

Q : 吉村さんには何種類ぐらいのチューニング方法があるんですか?
吉村瞳 だいたい20種類ぐらいだと思います。

Q : 歌を作り終えてから、奏法やチューニング方法を考えるんですか?
吉村瞳 いえ、違います。最初っからこのチューニングで、それも直感的に思います。
      
Q : ライヴの数が他のミュージシャンと比較して多いですよね?
吉村瞳 そうですか? わたしよりも多い人はたくさんいると思います。

Q : 何に刺激されてツアーに出たり、ライヴをしたりするのでしょう?
吉村瞳 わたしの場合、8年前にアルバムisn't it timeを出したとき、はじめて九州と東北ツアーをしたんです。ひとりで。そのときに九州や東北の方々にとてもお世話になって、とても楽しくて、こんなわたしでも「やっていけるかなぁ」と思ったんです。そのときの感情がずっとわたしを突き動かしてくれています。

Q : そのときからレパートリーは多かったのですか?
吉村瞳 今も決して多いとは思いませんが、当時はずっと少なかったんです。ギターは5台持ち歩いていて、今は2台ですけど、レパートリーは少なかったんですけど、ギターは多めでした(笑)。
わたしはギターのチューニングを曲ごとに変えるので、その間、おしゃべりで繋ぐのが苦手なんです。なのでギターは5台で、曲と曲との間をできるだけ短くしようと考えていました。今もおしゃべりは苦手ですけど、チューニングも曲と同じだから聞いていてくださいという気持ちになって……少し図々しくなりました(笑)。

Q : 歌詞はどのようにして書くのですか?
吉村瞳 ツアーは車移動なのですが、そのときはボンヤリとしかできなくて、歌詞を書き上げるのは電車のなかが多いんです。まわりにいる人たちを見て、勝手に妄想しているんです(笑)。

Q : テーマとかはあるんでしょうか?
吉村瞳 わたしの歌はどちらかというと内省的なものがほとんどだと思います。それと……良い意味でも、悪い意味でも「ピュア」というか、「無垢」なモノをうたおうと心がけています。

Q : 歌を書くのは早いほうだと思いますか?
吉村瞳 書けるときは1日でできるのですが、しばらくして詞を書き直すこともあります。どうしても抽象的になりやすいので、具体化したものにしようとするんですね。最近(2019年後半)は、そういう作業を頻繁にしていますね。1年ほど前から日本語の歌をいくつか書いていて、古い歌はあまりうたいたくなくってしまいました。それでも歌は「熟成」していくので、いろんなことを試してみたいと思っています。

新作では「歌」中心のアルバムを
吉村瞳
Q : 新しい歌もたくさんできているみたいですね。
吉村瞳 新しい歌を書いたりするのが、今、とても楽しいんです。それで、その歌をすぐにライヴで聞いてもらいたくなるんです(笑)。
Q : 新曲は後日、マイナーチェンジすることもあるんですか?
吉村瞳 はい。たくさんあります(笑)。

Q : 例えば、どの曲でしょうか?
吉村瞳 最近では「You'd Never Fell My Love」という曲をかなり書き直しました。歌詞の部分ですが。なので、タイトルも「He'd Never Feel My Love」にしました。「Women's Rights, Women's Lights」も大幅に歌詞を変えました。どちらもまだレコーディング前の曲です。それと、以前書いていた英詞の歌も、部分的に日本語詞をつけて入れ替えたりもしています。「スパーク・オブ・ジョイ」もそうですし、「カラー・オブ・マザー」も日本語の歌詞を加えました。歌はお肉みたいなんですよね。「熟成」していくような気がします。

吉村瞳
wheel in 2017

Q : 未発表曲もたくさんあるんですね。
吉村瞳 今、ライヴで演奏している歌はほとんどがそうですね。前作『ホイール・イン』が2017年だったので、そろそろ次のアルバムの用意をしているところです。

Q : どのようなアルバムになるんでしょうか? アイディアとかあれば教えてください。
吉村瞳 『ホイール・イン』を発表してから日本語の歌詞を中心に書きはじめて、レコーディングしていない(日本語詞の)歌は30曲ぐらいできてしまって……この間、数えたんです(笑)。自作では30曲のなかから10曲前後に絞りこんで、全曲オリジナルで日本語詞のものを収録しようと考えています。

Q : サウンド面でのアイディアはありますか?
吉村瞳 今まではどちらかというとライヴっぽく録音していたのですが、新しいアルバムでは、できるだけたくんさのミュージシャンの方に手伝っていただいて、もちろん、わたし自身もギターを弾きますけど、それよりもヴォーカルに集中できたらいいなと思っています。

Q : 2020年はその新しいアルバムが中心の活動になりますか?
吉村瞳 いえ、基本的にレコーディングや歌作りはツアーの合間にするつもりです。あくまでもライヴがわたしのなかでは中心です。ほとんどのライヴ・アーティストがそうであるみたいに、少し馴染みのない表現かもしれませんが、わたしも「ライヴのなかで歌を書いて録音して」というような活動をしていくつもりです。体力のつづくかぎり(笑)。

Q : いつ新曲を演奏するわからない? レコーディングしていることもあるんですか?
吉村瞳 はい。ほとんどのライヴでは録音しているます。新曲もできるかぎり演奏し、古い歌もときどきは新しい歌詞でお届けしたいと思っています。ツアーがつづいてもセットリストが違いますので、新鮮な印象を持っていただければ嬉しいです。

 

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